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とある駅前駐車場でのお話です。
そこには、60歳位の管理人のおじさんがいました。
いつも元気で明るく仕事の手際もよいそのおじさんは、どんな利用者にも明るい笑顔で挨拶をしています。急に雨が降ってきた時などは、傘がない人のためにわざわざ傘を用意してくれています。
駅前という立地なので、駐車場が満車になってしまうこともあります。普通は「満車」の看板を入口に立てて終わりなのですが、そのおじさんは入口の前に満車の間中ずっと立っているのです。そして、駐車をしようと入ってきた車の運転手一人一人に深々と頭を下げて謝っているのです。苦情を言う人にも嫌な顔ひとつせず丁寧に応対しています。
普段も管理人室にいることなどめったになく、必ず外に出て車の迎えや見送りを欠かしません。駐車場に車を迎える時には屈託のない笑顔で「いらっしゃいませ!」、見送る時はこれまた心のこもった「ありがとうございました!」という言葉と共に、その車が見えなくなるまで深々と頭を下げ続けているのです。
寒い日も暑い日も雨の日も風の日もそれは全く変わりません。
重い荷物を持った人がいれば車まで運んであげています。小さな子供を連れた人がいれば優しくあやしながらアメ玉なんかを渡し、お年寄りがいればできる限りの介助をしています。
他にも何人か管理人さんはいるのですが、ここまでの応対をしているのはこのおじさんだけです。変な話、ここまでしたって給料や待遇が変わるわけでもないのにです。
そんなおじさんでしたが、何年かして家庭の事情などもあり引退の日がきてしまいました。
その最後の仕事の日。
何と管理人室の周りは手土産や花束を持った人達であふれかえっているのです。それは駐車場の常連の利用者達でした。そして、みな口々にこれまでの感謝の意やお礼の言葉をおじさんに伝えています。記念におじさんと写真を撮っている人までいます。
おじさんのお客さんへの心づかいは多くのみなさんに伝わっていたのです。駐車場の管理人というともすれば何の変哲もない仕事が、いつのまにか多くの人に感動を与えるまでになっていたのです。
“つまらない仕事なんかない。仕事に関わる人の姿勢が仕事を面白くしたりつまらなくしているにすぎない。” そんな大切なことが学べるエピソードではないかなと思います。
〜今回のお話は、福島正伸著:「どんな仕事も楽しくなる3つの物語」(きこ書房)から一部引用・編集したものです。〜
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